スタッフだより

第110回 プラネタリウム「見えない宇宙のミステリー~謎の光・X線をとらえろ~」

2017年3月2日

今回のスタッフだよりは、プラネタリウム「見えない宇宙のミステリー」の企画・制作を担当した江越学芸員に話を聞きました。

見えない宇宙って何のことでしょうか?

夜空には多くの星たちが輝いています。星々を眺めながら、私たちはこの宇宙がどのようになっているのか、思いを巡らしたりします。しかし本当は、私たちは夜空のほんの一部しか見えていないのです。実は宇宙には、私たちの目には見えない光を出している星というのがあります。 私たちが普段見ている光のことを可視光線といいます。しかし星からは可視光線以外にも電波、赤外線、紫外線、X線などがやってきています。これらは目には見えませんが、みな光の仲間です。 今回のプラネタリウムでは、そんな宇宙からやってくる見えない光のうち、X線を出している星について紹介いたします。

どのようにして宇宙からやってくるX線を調べるのでしょうか?

X線とは病院でおなじみのレントゲンのことです。何でも通り抜けてしまうというイメージがありますが、意外にも空気はあまり通り抜けてくれません。そのため、普通の星のように地上から望遠鏡で観測することはできず、宇宙に人工衛星を打ち上げて調べます。 科学館の展示場4階には、1983年に日本が打ち上げたX線天文衛星「てんま」の実物大模型を展示しています。他にも各国から様々なX線天文衛星が打ち上げられており、宇宙にあるX線を出す星の観測を行っています。

どんな星がX線を出しているのでしょうか?

X線はとても温度が高い物体から放射されます。夜空に見えている星の温度は、数千度から数万度程度です。とても高いように感じますが、この程度の温度ではそれほど強いX線は出ません。星はとても遠くにあるため、私たちが肉眼で見ることができる星からは、あまりX線は検出されません。 しかし宇宙には、とても強いX線を出している場所があります。そこは、普通の星をはるかに上回る数千万度という高温になっています。こんなに高い温度になっているのは、ブラックホールがあるからではないかと考えられています。もしブラックホールがあれば、そこに周りから落ち込むガスは強い重力で高速に加速されて、数千万度という高温になるのです。

他にはどんな天体があるでしょうか?

爆発した星の跡もX線を出しています。夜空の星は、永遠に輝き続けるわけではありません。星にも寿命があり、やがて終わりを迎えます。星の中にはその最後に大爆発を起こして、粉々になってしまうものがあります。爆発の時はとても明るく輝きますが、徐々に暗くなっていき、数年も経つと普通の光では分からなくなってしまいます。 しかし爆発した星のガスは、秒速1万キロという猛烈な速度で膨張を続けます。この膨張しているガスは、もともと星間に漂っていたガスと衝突し、超高温のガス雲が生じます。その結果、X線で明るく輝くようになるのです。こうした天体を超新星残骸とよび、星が爆発したあと、数万年もの間、X線を放ち続けます。

最後にひとこと


江越航学芸員

日本は多くのX線天文衛星を打ち上げて、世界の天文学をリードしてきました。昨年2月には最新のX線天文衛星「ひとみ」が打ち上げられましたが、残念ながら姿勢制御のトラブルで、運用が中止されてしまいました。しかし宇宙の謎の解明のためにはX線の観測が欠かせないため、後継機が打ち上げられる計画になっています。
サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』の中に、「たいせつなことは、目に見えないんだよ」という言葉がありました。私たちの目で見える宇宙、それだけが宇宙の姿ではありません。むしろ目では見えない光こそ、宇宙の本当の姿を教えてくれるのです。

江越 航のホームページ


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