スタッフだより

第123回 プラネタリウム「眠れなくなる宇宙のはなし」

2018年4月1日

今回のスタッフだよりはプラネタリウムプラネタリウム「眠れなくなる宇宙のはなし」の企画・制作を担当した渡部学芸員に話を聞きました。

「眠れなくなる宇宙のはなし」って変わったタイトルですね

はい、なんだかおとぎ話のタイトルみたいですよね。これはプラネタリウム番組の原作の科学解説書のタイトルです。「眠れなくなる宇宙」ではなく、この本の宇宙のはなしを読んでいるうちに、興奮して「読者が眠れなくなる」という意味です。宇宙物理学者の佐藤勝彦先生が書かれたもので、2008年出版ですが、いまでも売れ続けているロングセラーです。読みやすい本ということもあって、有名人をふくむ色々な人が推薦しています。

どうして、この本を原作にしようと思ったのですか?

だれもが大好きな「宇宙って何だろう?」という宇宙論(宇宙観)をテーマにしたベストセラーだからです。たとえば、宇宙全体はどんな姿をしているのか? とか宇宙は永遠に続くのか? とか、宇宙の中心はどこか? といったことですね。ビッグバンとか、天動説とかいった言葉も登場します。ただ、宇宙論をプラネタリウムで紹介するのはなかなか難しく、特に最新の宇宙論は常識外れな話ばかりです。そこをこの本は、ごく素朴な古代の宇宙観からスタートして、最新の宇宙論まで「人は宇宙をどう見てきたのか」という考えで整理することで成功しています。しかも著者の佐藤勝彦先生は最新の宇宙論「インフレーション理論」の提唱者です。いうならば、宇宙論の歴史の登場人物自身が書いている本です。これをベースにすれば、宇宙論を楽しみやすいのではないかと考えたのです。なお、佐藤先生にはこのプラネタリウム版の監修もしていただきました。世界的科学者と一緒に仕事をする希有な体験でした。

番組のなかに「インフレーション理論」も登場しました。迫力がすごかったです。

ちょっと目がまわりますよね。インフレーションという宇宙最初に起こったスゴイできごとのイメージをつかんでもらいたいという演出です。もちろん、あれはイメージであって、ああいう風に見えたということではないのですが、ビッグバンという熱い宇宙が誕生する直前に、猛烈に宇宙が膨らんでそれが急速に落ち着いたという印象をもっていただければと思います。ちゃんと知るにはさらに原作や、他の本などを読んでもらえればうれしいです。

ところで、このプラネタリウム番組には、主人公の子供とフクロウが登場しますね。

子供のトキオは、番組を見るみなさんの代表です。宇宙に興味があり、好きだけど。本当の宇宙論はこれから知っていくという役です。実は、原作のスピンアウトとして絵本版があるのですが、そこに登場するキャラクターが魅力的だったので使わせていただきました。原作ともどもイラストレーターの長崎訓子先生の絵です。登場する科学者なども長崎先生の絵をつかわせていただいています。一方、ガイド役のフクロウは、プラネタリウム用に別に描きおこしたオリジナルキャラクターです。

なぜ、フクロウにしたんですか?

原作の最後に紹介される「ミネルヴァのフクロウは黄昏どきに飛び立つ」にちなんでいます。古代ギリシアの知の象徴であり、つまり人類の知の代表として設定しました。なんでも知っている賢いフクロウです。もちろん宇宙のことも大好きです。ただ、先生というよりも、トキオと同じ宇宙について興味がある先輩という感じにしました。さらにこの関係を生かすために先輩が後輩と一緒に宇宙を探求する旅をするという設定にしました。これは、原作にはなく、空間移動が体験できるプラネタリウムにあわせたオリジナルです。

原作と変えたところもあるんですね。あと、途中で歌が登場しますね。

そうですね、本を読むのとプラネタリウムを見るのはまったく違う体験ですので、映像や音のイメージや印象など感覚的なところも重視しています。原作の本は、先生が優しくおはなしするような感じになっています。一方、プラネタリウムでは、体験ということを重視し、できるだけ主人公が見る人の代表になるという目線で作りました。歌や音楽は、この番組にあわせてすべてオリジナルで作っています。他にも、脚本、演出、音響など大勢の方とチームで作りました。チームの中で意見が対立することもあり、大変な場面も何度もありましたが、やはり色々な知恵がでてくるものです。大変でしたが楽しい作業でした。

最後にひとこと


渡部義弥学芸員

このプラネタリウムのもう一つの魅力は、宇宙を疾駆するさいの歌です。歌詞は、それまでのはなしのまとめにもなっています。もし聞き逃したら、ぜひもう一回! 歌も注目してご覧になっていただければと思います。

渡部義弥のWEBページ


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