スタッフだより

第140回 いろいろな楽器のグループ分け

2019年12月10日

今回がスタッフだより初登場!2019年4月から大阪市立科学館の学芸員に加わった上羽学芸員に、お気に入りの展示や大好きな楽器についてお話しを聞きました!楽器って奥が深いんですね~。

いろいろな楽器

大阪市立科学館の2階には、楽器が展示されており、いくつかは実際に音を出して遊ぶことができます。このエリアはわたしのお気に入りのひとつです。というのも、わたしは小さいころから音楽が好きで、学校では音楽の授業を毎回とても楽しみにしていましたし、今でもさまざまな楽器を買い集めて、演奏を楽しんでいます。
もしかしたら「なぜ科学館に楽器が?」とふしぎに思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし楽器は科学の目で見ても、とても面白いものです。ここでは楽器のグループ分けについてのお話をご紹介します。

いろいろな楽器をグループに分ける

人類はその長い歴史の中で、いろいろな楽器を世界中で発明してきました。音楽にはあまり興味がないという方でも、きっといくつもの楽器が思い浮かぶはずです。
楽器は、その特徴によっていくつかのグループ分けすることができます。もっとも一般的なのは、「弦楽器」「木管楽器」「金管楽器」「打楽器」「鍵盤楽器」というグループ分けです。みなさんも聞いたことがあるでしょうか。バイオリンやギターは、弦を張っているから弦楽器。クラリネットは木でできているから木管楽器。トロンボーンは金属製なので金管楽器。銅鑼や太鼓は叩いて音を出すから打楽器。そのままですね。しかし、このグループ分けには、なんだかおかしなところもあるのです。

ピアノは「鍵盤楽器」?「弦楽器」?「打楽器」?

たとえば、ピアノのように鍵盤を持つ楽器はそのまま鍵盤楽器のグループに入れます。ピアノの中にはたくさんの弦が張ってあり、鍵盤を押すとハンマーがこの弦をたたいて音を出します。科学館の展示「とうめいピアノ」を見るとよくわかります。ということは、弦が張ってあるのだから弦楽器のグループに入れてもよさそうな気もします。いや、弦を「たたいて」音を出すのだから打楽器なのでは…。

「木製」ではないのに「木管楽器」?

おかしなところはまだまだあります。次はフルートを見てみましょう。キラキラと美しくかがやく金属製です。これは金管楽器でしょうか? いいえ、フルートは木管楽器に入れるのです。なぜでしょう? 確かに、フルートはもともと木でつくられていました。だからでしょうか?
それでは、尺八は? ・・・答えは、木管楽器です。でもちょっと待ってください。尺八は金属製ではないですが、木でもなく、竹でできています。「竹管楽器」なのでは??

「金管楽器」「木管楽器」は材質とは関係ない!

金管楽器、木管楽器というグループ分けは、実は楽器の材質ではなく、音の出しかたで決まるのです。息を吹き入れながらくちびるをブルブルとふるわせて音を出す楽器が金管楽器です。一方、息を吹き入れるけれどもくちびるはふるわせないで音を出す楽器が木管楽器のグループに入ります。くちびるではなく「リード」と呼ばれる薄い板をふるわせて音を出しているからです。材質は関係ないのに、「金管」「木管」というのはちょっとややこしいですね。

より筋の通ったグループ分けの方法

上のようなグループ分けは、ヨーロッパに起こったオーケストラの数百年の歴史の中で長く使われてきた方法でした。この代わりとなる、より筋の通ったグループ分けの方法が提案されています。この中で特に知られているのが、20世紀のはじめ、ドイツの研究者ホルンボステルとザックスによって発表された「ザックス=ホルンボステル分類」です。この方法では「楽器のふるえているところはどこか?」に注目して、4つの大きなグループ「弦鳴楽器」「膜鳴楽器」「体鳴楽器」「気鳴楽器」に分けられます。さらに、そのふるわせ方によって、さらに小さいグループに分けていきます。
「弦鳴楽器」は、弦を張った楽器です。この弦をふるわせることで音が出る楽器グループです。バイオリンやギター、そしてピアノもこのグループに入ります。
「膜鳴楽器」は、弦ではなく、うすい膜が張られている楽器です。この膜がふるえて音が出る楽器グループです。太鼓、タンバリンもこのグループにまとめられます。
「体鳴楽器」には、弦も膜も張ってありません。この楽器本体を、叩いたり、ふったり、はじいたりすることで、楽器本体がふるえて音が出る楽器です。銅鑼はこのグループです。
「気鳴楽器」は、空気の流れによって楽器の中の空気をふるわせて音が出る楽器グループです。金管楽器、木管楽器のどちらもこのグループに入れます。金管楽器は「気鳴楽器」のうち、「リップ・リード式吹奏楽器」に分けられます。木管楽器は、フルートや尺八のような「エアリード式吹奏楽器」や、サックスのような「リード付き吹奏楽器」など、さらに細かく分けられます。

みなさんの知っている他の楽器はどのようなしくみで音を出すのか、「ザックス=ホルンボステル分類」ではどのグループになるのか、みなさんも考えてみると、またちがった音楽の楽しみがあると思います。

最後にひとこと


上羽貴大 学芸員

楽器ごとに、さまざまな音色の個性があります。実は楽器の音色は、音の出るしくみと切っても切れない関係にあるのです。そこにもおもしろい科学があります。そのお話はまたの機会にご紹介しましょう。


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