スタッフだより

第58回 企画展「渋川春海と江戸時代の天文学」を開催します

2012年8月11日

9月4日から企画展「渋川春海と江戸時代の天文学 -『天地明察』の時代-」が開催されます。そこで今回のスタッフだよりでは、広報担当の大倉学芸員に企画展について話を聞きました。

 

渋川春海とはどんな人物なのですか?

江戸時代初期の棋士、天文学者、数学者です。日本で初めて国産の暦(カレンダー)を作った人です。多才な人なのですね。

日本初の暦ということですが、それまでは暦はなかったのでしょうか。

(↑渋川春海肖像画)

それまでは、中国の暦を借りていたのです。江戸時代の暦は月の満ち欠けで日付を決める太陰暦でした。1年を12ヵ月とすると季節がずれてきますから、閏月(うるうづき)を入れます。どのタイミングで入れるか問題になりますが、そこで天体観測が必要になります。

暦は今とはずいぶん違うんですね。

(写真3)(↑江戸期の暦)

現代では、電気を煌々と照らして生活をしてますが、昔は月明かりが大事だったんですね。

棋士というのは何なんですか。

囲碁や将棋をするのが仕事の人です。江戸時代、御城碁、御城将棋と言って、将軍の前で囲碁や将棋の御前試合が行われていました。渋川春海は、その囲碁の棋士でした。本因坊道策というとんでもなく強い人が同時代にいたので、トップに立つことはなかったのですが、なかなかの人だったようです。
夜空を眺めると、星々がそれぞれの場所に収まっている。碁盤の上の石も春海には同じように見えたのではないでしょうか。囲碁が家業だったのに、独自に数学や天文を学んでますね。

変わった人だったようですね。今回は渋川春海のどのような品が展示されるのでしょう。

星図は、碁盤に置かれた石の模様に似てませんか?春海は生涯で3つの星図を刊行しています。今回それらを一堂に展示します。3点が揃って展示されるのは初めてのことです。それから、近年発見された春海の肖像画も展示します。
また、映画「天地明察」で使用された大道具もお借りして展示します。中には天体の位置を測るための「象限儀」という装置もあります。これは高さ2.5メートルもある大きなものです。

(写真3)天体観測器「象限儀」

(写真3)左より「授時暦」、「大和暦」、天球儀 いずれも映画で使用した道具類。

渋川春海とこの展示について詳しく教えてください

実は、広報に携わるまで春海ことは何も知りませんでした。あるとき春海が本因坊道策と対局し、初手天元(碁盤の真ん中に初手を打つ、定石では考えられない手)を打った棋譜を見ました。天元打ちに目外しで応じ、さらに目外し、目外しと進行し、お互いとんでもない手を放ちます。まさに丁々発止です。そんな勝負をする春海や道策に興味を持ちました。 江戸時代、算額と言って、絵馬のように数学の問題を神社に奉納する風習が庶民にありました。そろばんができる人だってたくさんいました。実は江戸時代の日本は数学大国だったのではないでしょうか。春海は数学も学びましたが、どんな数学をやっていたのか、それらが天体観測や暦作りにどのように活かされたのか興味を持ちました。 渋川春海は江戸時代のちょっと遠い人と言うのが最初の印象でしたが、人物に興味が出てくるとどんな展示になるか期待が高まります。

最後にひとこと


大倉学芸員

今回は、科学・天文ファンの方だけでなく、歴史、小説、囲碁将棋などさまざまな興味を持つ方にご覧いただき、楽しんでいただける企画展になるのではないかと思います。 大倉宏のホームページ


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