スタッフだより
第50回 プラネタリウムリニューアルオープン
2011年12月11日
2011年12月11日(日)、プラネタリウムホールのドームスクリーンいっぱいに映像を映し出す「全天周映像システム」がリニューアルし、 より明るく鮮やかに、迫力ある宇宙や天体の映像が楽しめるようになりました。 そこで今回のスタッフだよりは、広報担当の大倉学芸員に「プラネタリウムリニューアル」について話を聞きました。
リニューアルで何が変わるのか教えてください
プラネタリウムはドームに星を映し出すものですが、現在のプラネタリウムでは、星だけでなく、デジタルプロジェクタで映像を映し出しています。このプロジェクタが入れ替えられ新しくなりました。また、プロジェクタに映像を送るコンピュータも部品交換いたしました。より明るくくっきりとした精細な映像をお楽しみください。
プラネタリウムドームに映し出される映像を、我々は全天周映像と呼んでいます。全天周映像の走りは1983年アメリカのE&S社が開発したDigistarでバージニア科学館に設置されたものです。当時は白黒システムでした。それが90年台後半にはカラー化され、10社以上が開発・販売するようになり、爆発的に普及し、現在全世界で1000館ほどが導入していると言われています。 プロジェクタは恒星を映し出す投影機に対して補助投影機と呼ばれることもありますが、重要な役割をしています。この主役クラスの全天周映像がパワーアップしたことにより、より迫力のあるプラネタリウムをお楽しみいただけるようになりました。
見どころはどこですか?
プロジェクタ技術は日進月歩です。またそれを制御するコンピュータも同様です。今回のリニューアルでは画素数、解像度、コンピュータの性能も上がったのですが、なんといっても向上したのは白黒のコントラストです。今までの16倍になりました。「鮮やかな赤、深い黒」なんてテレビCMみたいなコピーを考えたりもしましたが、宇宙空間など黒い背景の映像では、ぐっと奥行き感が増し、広い宇宙空間に漂っているかのような感覚が得られると思います。
リニューアル記念作品はどんな作品ですか
(撮影:堀田東氏)
「オーロラの世界」と「さがせ!第2の地球」の2作品です。 なぜ、リニューアルにオーロラなの?と聞かれることも多いのですが、オーロラは夜空で起こるもっとも人気のある現象のひとつです。
アラスカやカナダなどへオーロラ観光に行く人は年々増え、年間数十万人と言われています。
残念ながら僕は見たことがないのですが、制作した渡部義弥学芸員は数年前オーロラを見にカナダのイエローナイフにまで行っており、その迫力と感動が熱く伝わる作品なのではないかと思います。
(撮影:羽生章氏)
オーロラの元は、ほとんどは太陽からなのでしょうが、宇宙から飛んでくる電気を帯びた粒子。それが地球の周りの磁場の関係で北極と南極の周辺の俗にオーロラ帯と呼ばれる地域上空に飛び込んで、大気を光らせる現象です。数十キロから数百キロの高さで光るのだそうですから、大気は非常に、極めて希薄です。
ネオンサインと同じ原理なのでしょうが、そんな光が美しく肉眼で見られるなんて、ちょっと科学をかじった私には、とても不思議に思えます。本当なのかどうか、どんな風に光るのか、これは見てみるしかないのですが、なかなか実物を見ることはできません。それが、寒い思いもせず、大阪にいながらにして、迫力と臨場感をもって、包み込まれるようなオーロラ体験ができるのは、プラネタリウムならではと言えるでしょう。性能の上がったプロジェクタでどのようなオーロラが見られるのかは見てのお楽しみです。 「さがせ!第2の地球」はアメリカ・ユタ州ソルトレークのクラークプラネタリウムが製作した”The Extra Planet”の日本語版で、大阪市立科学館のオリジナルでもちろん日本初公開です。 夜空に見える星々のほとんどは、太陽と同じ自ら光る恒星です。その周りには、太陽系のように自ら光らない惑星を従えていないのでしょうか?そんな疑問の真偽は1995年まで分かりませんでした。それは、太陽系の外で惑星を見つけることは非常に難しかったからです。最初に見つかった惑星は、木星ほどの大きさで、その恒星近くをわずか4日でぐるぐる廻る星だったそうです。1995年のことです。
(c)The Clark Planetarium
(c)The Clark Planetarium
太陽と地球との距離の1/20の距離しか恒星から離れてないので、表面温度は1000度を超える灼熱の世界だそうです。そんな近くを廻られたら、恒星も影響を受けて多少ふらつきます。そのふらつきを検知することで見つかったのだそうです。 観測技術が進み、今では600個以上の太陽系外の惑星が見つかっていますが、大半は地球とは似ても似つかない星です。太陽が2つある惑星や、空はオーロラ、大地はネオンサインのように輝く中性子星の周りを廻る惑星、灼熱の世界など極限の世界です。
いつか、地球に良く似た星が見つかるでしょうか。私は、きっと見つかると思います。そこに生命はいるでしょうか?これは分かりません。
でも、地球と良く似た環境なら、同じ科学法則に則るのなら、十分可能性があるでしょう。検証は難しいでしょうが、現在見つかっている星々は、とても過酷な環境です。それがいつか、「たったひとつの地球」というフレーズが科学的には正しくなくなる日が来るでしょう。それでも、「かけがえのない地球」は変わることはありません。いろんな空想ができ、いろんなことを考えさせられる作品だと思います。
最後にひとこと
大倉学芸員
科学が進歩しているということは、そう、プラネタリウムも進歩しているのです!大阪市立科学館で最新の迫力あるプラネタリウムをお楽しみください。 大倉宏のホームページ
スタッフだより
- 第150回 ノーベル賞受賞100年記念「アインシュタイン展」
- 第149回 全天周映像作品「ブラックホールを見た日~人類100年の挑戦~」
- 第148回 プラネタリウム「天王星発見240年」
- 第147回 南部陽一郎生誕100周年記念 企画展示「ほがらかに」―南部陽一郎の人生と研究―
- 第146回 プラネタリウム「冬の天の川」
- 第145回 プラネタリウム「HAYABUSA2 ~REBORN」
- 第144回 サイエンスショー「ふしぎな形」
- 第143回 プラネタリウム「火星ふたたび接近中!」
- 第142回 ミニ企画「積み木のルーツ~フレーベル『恩物』」展
- 第141回 プラネタリウム「夜空の宝石箱『すばる』」
- 第140回 いろいろな楽器のグループ分け
- 第139回 サイエンスショー「電池がわかる」
- 第138回 プラネタリウム「星空歴史秘話」
- 第137回 プラネタリウム「木星と土星の世界」
- 第136回 「蜃気楼(しんきろう)」を見てみませんか?
- 第135回 プラネタリウム「宇宙ヒストリア~138億年、原子の旅~」
- 第134回 プラネタリウム。リニューアルの舞台裏
- 第133回 展示場のリニューアル
- 第132回 大阪市立科学館と大阪大学
- 第131回 展示場リニューアル準備 ~気象コーナー~
- 第130回「はやぶさ2」
- 第129回 スペシャルナイト「さよならインフィニウムL-OSAKA」
- 第128回「2018サイエンスサーカス・ツアー・ジャパン」
- 第127回「スーパー磁石で大実験」
- 第126回「科学デモンストレーター10周年」
- 第125回「火星大接近」
- 第124回 サイエンスショー「ふわふわ、きらきら!シャボン玉サイエンス」
- 第123回 プラネタリウム「眠れなくなる宇宙のはなし」
- 第122回 プラネタリウム「はるかなる大マゼラン雲」
- 第121回 サイエンスショー「虹でじっけん、光のせかい」
- 第120回 幼児のための企画展「にじのせかい」
- 第119回 プラネタリウム「ブラックホール合体!重力波」
- 第118回 企画展「大阪市立科学館資料で見るノーベル賞展」
- 第117回 サイエンスショー「マイナス200℃のふしぎ」
- 第116回 プラネタリウム「秋の夜長に月見れば」
- 第115回 「大人も子どもも、紫キャベツ!」
- 第114回 「空を眺めると…~夏の雲はモクモク雲~」
- 第113回 プラネタリウム「木星と土星を見よう」
- 第112回 プラネタリウム「見上げよう!未来の星空」
- 第111回 企画展「石は地球のワンダー~鉱物と化石に魅せられた2人のコレクション~」
- 第110回 プラネタリウム「見えない宇宙のミステリー~謎の光・X線をとらえろ~」
- 第109回 「星図の描き方」
- 第108回 サイエンスショー「静電気なんてこわくない!?」
- 第107回 プラネタリウム解説デビュー裏話
- 第106回 サイエンスショー「ふしぎな形にだまされるな!」
- 第105回 「化学と宮沢賢治」
- 第104回 プラネタリウム「星空オールナイト」
- 第103回 プラネタリウム「火星・土星・冥王星ツアー」
- 第102回 プラネタリウム「ファミリータイム」
- 第101回 この夏は「花火×化学」
- 第100回 プラネタリウム「銀河の世界」
- 第99回 プラネタリウム「星の誕生」
- 第98回 「スーパー磁石で大冒険」
- 第97回 「鉱物の結晶構造」
- 第96回 「だれでもできる!天体写真を写してみよう」
- 第95回 プラネタリウム「ロゼッタ、彗星を探査せよ」
- 第94回 サイエンスショー「フシギな偏光板」
- 第93回 企画展「光とあかり」
- 第92回プラネタリウム「ブラックホール」
- 第91回サイエンスショー「赤青緑の光サイエンス」
- 第90回国際光年協賛「花火の色とひかり展」
- 第89回プラネタリウム「天の川をさぐる」
- 第88回プラネタリウム「ボイジャー太陽系脱出」
- 第87回サイエンスショー「飛ばしてみよう!」
- 第86回 プラネタリウム「オーロラ」
- 第85回 サイエンスショー「バランス大実験」
- 新年のごあいさつ
- 第84回 プラネタリウム「ビッグバン~宇宙ヒストリア~」
- 第83回 サイエンスショー「水の科学」:凍らない水
- 第82回 プラネタリウム「宇宙人をさがす冴えたやり方―沈黙のフライバイ」
- 第81回 「はやぶさ2」 プラネタリウム&企画展について
- 第80回 サイエンスショー「空気パワー」
- 第79回 プラネタリウム「天の川って、なんだろう」
- 第78回 プラネタリウム「月へいこう!~おためし月面生活~」
- 第77回 オーストラリア・パワーハウスミュージアム訪問記(後編)
- 第77回 オーストラリア・パワーハウスミュージアム訪問記(前編)
- 第76回 プラネタリウム「南十字星にあいにいこう」
- 第75回 「都会の星」写真展
- 新年のごあいさつ
- 第74回 サイエンスショー「炎のアツい科学」
- 第73回 プラネタリウム「オーロラ」
- 第72回 企画展「色の彩えんす」まもなく終了
- 第71回 プラネタリウム「宇宙のトップスター」
- 第70回 国際会議で発表
- 第69回 サイエンスショー「マイナス200℃の世界」のご紹介
- 第68回 プラネタリウム2013年夏のプログラム紹介
- 第67回 くうきフシギ発見!~シーオーツーのひみつ~
- 第66回 プラネタリウム「未来の星座を見てみよう」
- 第65回 パンスターズ彗星!
- 第64回 サイエンスショー「サウンド・オブ・サイエンス♪」
- 第63回 『宇宙のハーモニー ~奇跡の地球に生まれて~』 のできるまで
- 第62回 プラネタリウム新プログラム「オーロラ」
- 第62回 プラネタリウム新プログラム「木星」
- 第61回 展示場3階「色の化学」
- 第60回 宇宙に浮かぶ望遠鏡
- 第59回 光のヒ・ミ・ツ
- 第58回 企画展「渋川春海と江戸時代の天文学」を開催します
- 第57回 新スタッフ紹介
- 第56回 プラネタリウム・キッズタイムと新プログラム
- 第55回 金環日食
- 第54回 そらみたことか-気象光学現象について-
- 第53回 電気科学館の思い出
- 第52回 科学デモンストレーターとは何か?
- 第51回 「世界化学年2011」を振り返る
- 第50回 プラネタリウムリニューアルオープン
- 第49回 皆既月食
- 第48回 新展示「風車」登場!
- 第47回 アンドロメダ銀河の正体
- 第46回 花火の化学展
- 第45回 七夕にまつわる新発見!
- 第44回 「蜃気楼」ってなんだろう
- 第43回 新館長よりご挨拶
- 第42回 科学館ミニブック 第2弾!第3弾!登場
- 第41回 世界化学年2011
- 第40回 アジアの星と神話
- 第39回 科学館のおすすめ展示 その2
- 第38回 はやぶさ帰還カプセル展示を終えて
- 第37回 科学館のおすすめ展示 その1
- 第36回 新スタッフ紹介
- 第35回 大型映像を見よう
- 第34回 「はやぶさ」遂に地球へ帰還
- 第33回 科学館もおでかけします
- 第32回 展示場をより楽しむ方法
- 第31回 サイエンスショーができるまで
- 第30回 科学館天文台
- 第29回 モバイルプラネタリウム
- 第28回 宇宙の「謎」を解き明かす
- 第27回 流星群を観察してみませんか?
- 第26回 20周年を迎えて
- 第25回 はじめまして!
- 第24回 「皆既日食」見て来ました!
- 第23回 「7月22日、日食を見よう!」
- 第22回 「広報担当S&Yの試写レポート」
- 第21回 「宇宙がわかる」
- 第20回 「HAYABUSA」公開開始!
- 第19回 「いろいろ集めてます!第2弾」
- 第18回 「世界天文年2009」
- 第17回 「元素がわかる」
- 第16回 「ペルセウス座流星群を見よう!」
- 第15回 「新!展示場 誕生」
- 第14回 「天の川を見よう」
- 第13回 「リニューアルまであと2ヶ月!」
- 第12回 「サイエンスガイドって?」
- 第11回 「137億年の歴史」
- 第10回 「プラネタリウムのライブ解説」
- 第9回 「いろいろ集めてます」
- 第8回 「電気びりびり」
- 第7回 「プラスチック 100年」
- 第6回 「プラネタリウムの今昔」
- 第5回 「結晶の世界」
- 第4回 「密着!学芸員」
- 第3回 「そらみたことか」
- 第2回 「流れ星を追いかける男」
- 第1回 「ほないくで」
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