スタッフだより
第76回 プラネタリウム「南十字星にあいにいこう」
2014年4月3日
今回のスタッフだよりはプラネタリウム「南十字星にあいにいこう」の見どころについて飯山学芸員に聞きました。
南十字星はどこで見ることができますか?
南十字星は、星の名前の中でも有名なものの一つではないでしょうか。南国への憧れを誘うような雰囲気をまとう言葉でもあります。それもそのはずで、南十字星は大阪にいる限り見ることはできないのです。南十字星を見るためには、大阪よりももっと南へ行かなければならないのです。今回のプラネタリウムでは、オーストラリアのシドニーまで、南十字星を見に行きます。
場所によって見られる星座と見られない星座があるんですね
オーストラリアに行ったからと言って、見える星座が全く変わってしまうわけではありません。同じ地球の上から宇宙を見ているわけですから、星座そのものの形が変形したりするわけではなく、単に大阪からでは地球が邪魔をして見えなかった方向が、オーストラリアからならば見える、というだけのことです。大阪では見ることのできない星座はいくつもありますが、その中で南十字星はもっとも有名なものだと思います。
南十字星についてくわしく教えてください
北斗七星がおおぐま座の一部であったり、夏の大三角形がこと座、わし座、はくちょう座のそれぞれの星を集めたものであったりするのと違って、南十字星は、それだけで「みなみじゅうじ座」という一つの星座になっています。しかし、南十字星にまつわるギリシア神話はありません。そもそも、ギリシア神話の時代には、みなみじゅうじ座は無かったのです。星座の歴史は大変古く、ギリシア文明よりももっと昔から、星座の原型は作られていたのですが、それは、現在使われている88の星座の全てがそうであるという訳ではないのです。
南十字星はいつ頃作られたのですか
みなみじゅうじ座という星座が作られたのは、16世紀の終わり頃です。当時は大航海時代であり、ヨーロッパ人が新大陸やアジアを目指して、世界の海を冒険した時代です。大海原に出ると、どちらを向いても海しか見えず、景色では方角を判断することができません。大航海時代の船乗りたちは、夜空の星を見て航海の道しるべとしたのでした。北半球では北極星の位置を測ることで、方角を知ることができるだけでなく、自分のいる緯度を知ることができます。しかし、南半球へ船を進めると、北極星は水平線の下に沈み、見えなくなってしまいます。北極星の代わりに「南極星」が見えればよいのですが、天の南極の近くには明るい星が無く、「南極星」と呼べそうな位置にある星は、5等星という暗い星です。これでは、近くの他の星と見間違う可能性が高く、不便です。天の南極の位置を知る目印として、いくつかの方法が考えられましたが、その中の一つが、南十字星を使う方法です。南十字星の十字架の長い方の線を、4.5倍ほど延ばした先が、天の南極の近くを指します。キリスト教徒であった大航海時代の船乗りたちにとって、十字架の形に並ぶ星は、特に大切に考えられたのではないでしょうか。南十字星が一つの独立した星座として認識されるようになったのは、このような背景があったことと思います。
古来から南十字星って重要な星座なんですね
南十字星は天の川の中に位置しています。天の川は微かな星が大量に集まっている場所ですから、双眼鏡で南十字星を見ると、本当にたくさんの星の中に、目立つ星が十字架の形に並び、華やかな眺めです。さらに、南十字星に隣接するように、「石炭袋」と呼ばれる暗黒星雲があります。宮沢賢治が、「銀河鉄道の夜」の中で、「空の穴」と例えたように、天の川の中にまるで穴があいたようにぽっかりと光の無い暗い部分が広がっています。天の川の中には、そこかしこに暗黒星雲があるのですが、石炭袋はその中でも輪郭が分かりやすく、存在を意識しやすいものです。
また、南十字星からは少し離れますが、「大マゼラン雲」と「小マゼラン雲」も日本からは見ることができない珍しい天体です。それぞれが私たちが住む天の川銀河の隣にある、別の銀河で、天の川銀河よりは小規模ですが、それでも数百億個の星からなる、まさに「星の雲」です。
最後にひとこと
飯山青海学芸員
実際にオーストラリアまで出かけるのは大変ですが、プラネタリウムの中で、南半球の星空を楽しんでください。
スタッフだより
- 第150回 ノーベル賞受賞100年記念「アインシュタイン展」
- 第149回 全天周映像作品「ブラックホールを見た日~人類100年の挑戦~」
- 第148回 プラネタリウム「天王星発見240年」
- 第147回 南部陽一郎生誕100周年記念 企画展示「ほがらかに」―南部陽一郎の人生と研究―
- 第146回 プラネタリウム「冬の天の川」
- 第145回 プラネタリウム「HAYABUSA2 ~REBORN」
- 第144回 サイエンスショー「ふしぎな形」
- 第143回 プラネタリウム「火星ふたたび接近中!」
- 第142回 ミニ企画「積み木のルーツ~フレーベル『恩物』」展
- 第141回 プラネタリウム「夜空の宝石箱『すばる』」
- 第140回 いろいろな楽器のグループ分け
- 第139回 サイエンスショー「電池がわかる」
- 第138回 プラネタリウム「星空歴史秘話」
- 第137回 プラネタリウム「木星と土星の世界」
- 第136回 「蜃気楼(しんきろう)」を見てみませんか?
- 第135回 プラネタリウム「宇宙ヒストリア~138億年、原子の旅~」
- 第134回 プラネタリウム。リニューアルの舞台裏
- 第133回 展示場のリニューアル
- 第132回 大阪市立科学館と大阪大学
- 第131回 展示場リニューアル準備 ~気象コーナー~
- 第130回「はやぶさ2」
- 第129回 スペシャルナイト「さよならインフィニウムL-OSAKA」
- 第128回「2018サイエンスサーカス・ツアー・ジャパン」
- 第127回「スーパー磁石で大実験」
- 第126回「科学デモンストレーター10周年」
- 第125回「火星大接近」
- 第124回 サイエンスショー「ふわふわ、きらきら!シャボン玉サイエンス」
- 第123回 プラネタリウム「眠れなくなる宇宙のはなし」
- 第122回 プラネタリウム「はるかなる大マゼラン雲」
- 第121回 サイエンスショー「虹でじっけん、光のせかい」
- 第120回 幼児のための企画展「にじのせかい」
- 第119回 プラネタリウム「ブラックホール合体!重力波」
- 第118回 企画展「大阪市立科学館資料で見るノーベル賞展」
- 第117回 サイエンスショー「マイナス200℃のふしぎ」
- 第116回 プラネタリウム「秋の夜長に月見れば」
- 第115回 「大人も子どもも、紫キャベツ!」
- 第114回 「空を眺めると…~夏の雲はモクモク雲~」
- 第113回 プラネタリウム「木星と土星を見よう」
- 第112回 プラネタリウム「見上げよう!未来の星空」
- 第111回 企画展「石は地球のワンダー~鉱物と化石に魅せられた2人のコレクション~」
- 第110回 プラネタリウム「見えない宇宙のミステリー~謎の光・X線をとらえろ~」
- 第109回 「星図の描き方」
- 第108回 サイエンスショー「静電気なんてこわくない!?」
- 第107回 プラネタリウム解説デビュー裏話
- 第106回 サイエンスショー「ふしぎな形にだまされるな!」
- 第105回 「化学と宮沢賢治」
- 第104回 プラネタリウム「星空オールナイト」
- 第103回 プラネタリウム「火星・土星・冥王星ツアー」
- 第102回 プラネタリウム「ファミリータイム」
- 第101回 この夏は「花火×化学」
- 第100回 プラネタリウム「銀河の世界」
- 第99回 プラネタリウム「星の誕生」
- 第98回 「スーパー磁石で大冒険」
- 第97回 「鉱物の結晶構造」
- 第96回 「だれでもできる!天体写真を写してみよう」
- 第95回 プラネタリウム「ロゼッタ、彗星を探査せよ」
- 第94回 サイエンスショー「フシギな偏光板」
- 第93回 企画展「光とあかり」
- 第92回プラネタリウム「ブラックホール」
- 第91回サイエンスショー「赤青緑の光サイエンス」
- 第90回国際光年協賛「花火の色とひかり展」
- 第89回プラネタリウム「天の川をさぐる」
- 第88回プラネタリウム「ボイジャー太陽系脱出」
- 第87回サイエンスショー「飛ばしてみよう!」
- 第86回 プラネタリウム「オーロラ」
- 第85回 サイエンスショー「バランス大実験」
- 新年のごあいさつ
- 第84回 プラネタリウム「ビッグバン~宇宙ヒストリア~」
- 第83回 サイエンスショー「水の科学」:凍らない水
- 第82回 プラネタリウム「宇宙人をさがす冴えたやり方―沈黙のフライバイ」
- 第81回 「はやぶさ2」 プラネタリウム&企画展について
- 第80回 サイエンスショー「空気パワー」
- 第79回 プラネタリウム「天の川って、なんだろう」
- 第78回 プラネタリウム「月へいこう!~おためし月面生活~」
- 第77回 オーストラリア・パワーハウスミュージアム訪問記(後編)
- 第77回 オーストラリア・パワーハウスミュージアム訪問記(前編)
- 第76回 プラネタリウム「南十字星にあいにいこう」
- 第75回 「都会の星」写真展
- 新年のごあいさつ
- 第74回 サイエンスショー「炎のアツい科学」
- 第73回 プラネタリウム「オーロラ」
- 第72回 企画展「色の彩えんす」まもなく終了
- 第71回 プラネタリウム「宇宙のトップスター」
- 第70回 国際会議で発表
- 第69回 サイエンスショー「マイナス200℃の世界」のご紹介
- 第68回 プラネタリウム2013年夏のプログラム紹介
- 第67回 くうきフシギ発見!~シーオーツーのひみつ~
- 第66回 プラネタリウム「未来の星座を見てみよう」
- 第65回 パンスターズ彗星!
- 第64回 サイエンスショー「サウンド・オブ・サイエンス♪」
- 第63回 『宇宙のハーモニー ~奇跡の地球に生まれて~』 のできるまで
- 第62回 プラネタリウム新プログラム「オーロラ」
- 第62回 プラネタリウム新プログラム「木星」
- 第61回 展示場3階「色の化学」
- 第60回 宇宙に浮かぶ望遠鏡
- 第59回 光のヒ・ミ・ツ
- 第58回 企画展「渋川春海と江戸時代の天文学」を開催します
- 第57回 新スタッフ紹介
- 第56回 プラネタリウム・キッズタイムと新プログラム
- 第55回 金環日食
- 第54回 そらみたことか-気象光学現象について-
- 第53回 電気科学館の思い出
- 第52回 科学デモンストレーターとは何か?
- 第51回 「世界化学年2011」を振り返る
- 第50回 プラネタリウムリニューアルオープン
- 第49回 皆既月食
- 第48回 新展示「風車」登場!
- 第47回 アンドロメダ銀河の正体
- 第46回 花火の化学展
- 第45回 七夕にまつわる新発見!
- 第44回 「蜃気楼」ってなんだろう
- 第43回 新館長よりご挨拶
- 第42回 科学館ミニブック 第2弾!第3弾!登場
- 第41回 世界化学年2011
- 第40回 アジアの星と神話
- 第39回 科学館のおすすめ展示 その2
- 第38回 はやぶさ帰還カプセル展示を終えて
- 第37回 科学館のおすすめ展示 その1
- 第36回 新スタッフ紹介
- 第35回 大型映像を見よう
- 第34回 「はやぶさ」遂に地球へ帰還
- 第33回 科学館もおでかけします
- 第32回 展示場をより楽しむ方法
- 第31回 サイエンスショーができるまで
- 第30回 科学館天文台
- 第29回 モバイルプラネタリウム
- 第28回 宇宙の「謎」を解き明かす
- 第27回 流星群を観察してみませんか?
- 第26回 20周年を迎えて
- 第25回 はじめまして!
- 第24回 「皆既日食」見て来ました!
- 第23回 「7月22日、日食を見よう!」
- 第22回 「広報担当S&Yの試写レポート」
- 第21回 「宇宙がわかる」
- 第20回 「HAYABUSA」公開開始!
- 第19回 「いろいろ集めてます!第2弾」
- 第18回 「世界天文年2009」
- 第17回 「元素がわかる」
- 第16回 「ペルセウス座流星群を見よう!」
- 第15回 「新!展示場 誕生」
- 第14回 「天の川を見よう」
- 第13回 「リニューアルまであと2ヶ月!」
- 第12回 「サイエンスガイドって?」
- 第11回 「137億年の歴史」
- 第10回 「プラネタリウムのライブ解説」
- 第9回 「いろいろ集めてます」
- 第8回 「電気びりびり」
- 第7回 「プラスチック 100年」
- 第6回 「プラネタリウムの今昔」
- 第5回 「結晶の世界」
- 第4回 「密着!学芸員」
- 第3回 「そらみたことか」
- 第2回 「流れ星を追いかける男」
- 第1回 「ほないくで」
開館日カレンダー
■は休館日です
本日のプラネタリウム
残席情報
本日は9:30開館です。
残席表示も9:30からご覧いただけます。
- 所要時間
- 約45分間
お客様の安全のため、途中入場できません。
ブラウザを更新してご確認ください