スタッフだより

第47回 アンドロメダ銀河の正体

2011年9月10日

9月からプラネタリウムのプログラムが新しくなりました。テーマは「アンドロメダ銀河」。秋の夜空を見あげると、アンドロメダ座の片隅に、細長い光の雲のように見える天体があります。私たちのすぐお隣とも言うべき位置にある銀河とは一体どんなものなのでしょうか。天文担当の飯山学芸員に話をききました。

アンドロメダ銀河の正体を明らかにしたエドウィン・ハッブル


(エドウィン・ハッブル)

今から100年ほど前、20世紀の初頭、当時の天文学界を2分する論争がありました。アンドロメダ銀河をはじめとする「渦巻き銀河」(当時は「渦巻き星雲」という言い方をしていました)は、私たちの住む天の川銀河の中にある天体なのか、外にある天体なのか、という問題でした。
当時の理解では、宇宙はどこまでも星がちりばめられている世界ではなく、ある程度の大きさを持った星の集団である「天の川銀河」というものがあり、その中に私たちの太陽系が入っているということは知られていました。天の川銀河は、どら焼きのような形をしていて、普段私たちが夜空に見る星も、望遠鏡を使わなければ見えないような暗い星も、すべてがこの天の川銀河に含まれる星であり、天の川銀河の外の世界がどうなっているのか、ということについては、ほとんど何もわかっていなかった状態でした。

渦巻き銀河の正体とは?


(アンドロメダ銀河)

エドウィン・ハッブルは、渦巻き銀河の正体を明らかにすべく、当時世界最大の望遠鏡を使って、アンドロメダ銀河の観測に挑みました。宇宙に数ある渦巻き銀河のうち、アンドロメダ銀河は地球から最もよく見えて観測しやすいものであったからです。
ハッブルが撮影したアンドロメダ銀河の拡大写真には、おびただしい数の非常に暗い星が写っていました。星の一つ一つの明るさが非常に暗いことは、アンドロメダ銀河が非常に遠方にあることを示唆しています。さらにハッブルはいくつかの他の渦巻き銀河も、同じように非常に暗い星が大量に集まっている天体であることを明らかにしました。
さらにハッブルは、アンドロメダ銀河をはじめとする渦巻き銀河の距離の測定を行います。当時のハッブルが求めた値は、アンドロメダ銀河までの距離が約90万光年という値です。これは現在知られているアンドロメダ銀河までの距離(約230万光年)に比べるとかなり短い距離なのですが、これは、後の時代になってから、遠方の星までの距離を計算するために重要な知見が発見され、計算の方法が変わったことに大きな原因があり、ハッブルの責任ではありません。しかし、ハッブルの求めた90万光年という値であっても、アンドロメダ銀河が天の川銀河の大きさ(現在の知見では直径約10万光年)をはるかに超えて遠方にあるということは明らかであり、さらにハッブルは他のいくつかの渦巻き銀河についても距離を求め(すべてアンドロメダ銀河よりも遠い距離であった)、渦巻き銀河という種類の天体は、天の川銀河の外の天体であることを明らかにしたのでした。

ハッブルの研究により明らかになったこと

ハッブルの研究により、天の川銀河の外にも銀河の世界が広がっていることが明らかになり、アンドロメダ銀河は私たちの住む天の川銀河のすぐお隣ともいうべき位置にある渦巻き銀河であることが分かったのです。さら後には、私たちの住む天の川銀河も、宇宙に数ある銀河の中の、ありふれた銀河の一つでしかないことが明らかになります。
ちなみに、アンドロメダ銀河は、街灯などの無い理想的な星空の下であれば、肉眼でもその存在を見つけることがあります。アンドロメダ銀河は望遠鏡などの機械を使わずに人間が見ることのできる最も遠い天体です。また、ハッブル宇宙望遠鏡の名は、エドウィン・ハッブルから取られています。

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