スタッフだより

第82回 プラネタリウム「宇宙人をさがす冴えたやり方―沈黙のフライバイ」

2014年10月7日

いま、科学研究の分野で、宇宙生命や宇宙人が話題になることが多くなっています。様々な研究が進んで、これらが夢物語ではなくなってきているからです。そうした動きは、時々ニュースになって流れてきます。たとえば「地球とそっくりな星が発見される」とか「木星の衛星エウロパに生命活動の可能性」といったものです。
ただ、今(2014年10月1日)のところ、地球の外には、宇宙人も見つかっていなければ、原始的な生命すら見つかっていません。

では、どうやってさがせばいいのでしょうか? ここでは宇宙人に限って考えてみましょう。

一番楽な方法は? 宇宙人が地球までやってきて「こんにちは」と言ってくれることですね。ただ、実はこれは地球人か宇宙人か見分けがつかないという問題があります。たとえば、私が「私は宇宙人だ!」と言ったところで、だれも信じてくれないでしょう。医学的に調べてみて地球人と同じだとしたら、これはもうわかりません。
もちろん、姿かたちから何から、全然違えば、宇宙人だと信じられるかもしれませんね。

では、どうやってさがせばいいのでしょうか? ここでは宇宙人に限って考えてみましょう。

一番楽な方法は? 宇宙人が地球までやってきて「こんにちは」と言ってくれることですね。ただ、実はこれは地球人か宇宙人か見分けがつかないという問題があります。たとえば、私が「私は宇宙人だ!」と言ったところで、だれも信じてくれないでしょう。医学的に調べてみて地球人と同じだとしたら、これはもうわかりません。

もちろん、姿かたちから何から、全然違えば、宇宙人だと信じられるかもしれませんね。

もう少し違う方法はないのでしょうか?

宇宙人ですから、地球以外の天体や宇宙空間に住んでいれば文句はないでしょう。そして、そういう宇宙人はもしかしたら、地球にあいさつの手紙や電話をかけているかもしれません。
どんな手紙や電話なのかは、もちろんわかりませんが、地球人の発想でいえば、電波での通信が考えられます。電波通信が盛んになってから、この発想で宇宙人さがしは行われてきました。逆に、どこにいるかわからない宇宙人に対して、電波でのメッセージを送ったりもしてきました。もっといえば、地球の放送電波、テレビやFMラジオ、アマチュア無線の電波は宇宙に漏れ出ています。そうしたものを傍受してくれているかもしれません。
ただ、これはかなり途方もない話です。地球人が電波を使い始めてから100年あまり。これは地球文明1万年に対しても、もちろん地球の生命発生から40億年という時間に対しても、あまりにわずかな時間でしかなく、今後もどうかわかりません。宇宙人にしても同じことで、すごい偶然通しの重なりがないと、不可能なのかもしれませんね。
では、もうちょっと確実な方法はないのでしょうか? たとえば、宇宙船を宇宙人がいそうな星に飛ばして写真を撮影して確かめる。そうしたことを考えた科学者もいます。そのなかで、JAXAの野田篤司先生が20年ほど前に実際に考えたアイデアが、このプラネタリウムのテーマです。いくつかのSFでも取り上げられていますが、ここではSF作家の野尻抱介さんの短編SF「沈黙のフライバイ」を原作に紹介しました。
宇宙船を星に飛ばして確かめるには、いくつかやり方があります。小惑星探査機はやぶさは、小惑星のサンプルを採取して地球に持ち帰りました。これを「サンプルリターン」といって、かなり高度な探査です。着陸してしらべる「ランディング」そばまでいって、天体のまわりをまわりながら調べる「オービター」など、サンプルリターンよりは易しい方法もあります。ただ、これをやるには、天体のスピードをあわせるためのブレーキが必要です。天体をとらえ、適切にコントロールしなければいけません。

そこで、どんな天体の探査でも真っ先に行われるのが「フライバイ」です。フライ=飛ぶ、バイ=横を、ということで、目標の天体の横をすりぬけざまに、天体を調べる方法です。これが一番シンプルな方法です。フライバイで大きな成果をあげた探査機にはアメリカの「マリナー」「パイオニア」「ボイジャー」などがあります。
そしてフライバイ探査でもやれればいろいろメリットがあります。まず、宇宙人が町をつくっていれば、それでわかるのです。電波通信をしていない、シャイな宇宙人だとしてもなんら問題はありません。ちょっとさびしいですが、町の廃墟だとしてもわかります。かつて宇宙人が栄え、滅んだとしてもわかるのです。また、宇宙人がかりにその星にいなくても、森林が広がっている。ということでも、宇宙生命の謎を解くには十分すぎるほどです。
なら、すぐにやったらいいじゃないか? と思いますよね。太陽系の中の天体については、かなり行われてきましたが、宇宙人はダメ、そして宇宙生命の証拠すら見つかっていません。地下や氷の下を調べないといけないということになってきています。めざすなら、地球と同じような惑星を持つ恒星(別の太陽)系となります。
ただ、問題は、時間がかかりすぎるということです。隣の恒星系でも、現在の宇宙探査機では到達に何万年もかかります。それまで人類が生きていられるかどうかとか、そもそも100年前のこともわからない人類が、何万年前のご先祖さまがやった仕事を覚えていられるの? とか、発案して努力した人が何もわからないとか。何万年も宇宙船が無事かというと、かなり無理があるんじゃないかとか。まあ、不可能といっていいでしょう。

プラネタリウムのドラマではそれを、30年でやる方法を考えます。隣の恒星から電波が到着する5年を加えて、35年で計画をやりおえるのです。ワープとかタイムマシンなんて見込みのないことは使いません。いま手元にある技術だけをつかってです。 そんな無茶な? いえ、できます。ドラマの登場人物、ノジマさんとヤヨイさんと一緒に、宇宙人をさがす冴えたやり方を、さぐってください。

最後にひとこと


渡部学芸員

大阪市立科学館 開館25周年記念事業として制作されたプラネタリウム「宇宙人を探すさえたやり方」。プラネタリウムではめずらしい、俳優を採用したドラマ仕立ての作品です。ぜひご覧ください。渡部学芸員のホームページ

 

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