スタッフだより

第145回 プラネタリウム「HAYABUSA2 ~REBORN」

2021年2月6日

今回のスタッフだよりは、プラネタリウム「HAYABUSA2 ~REBORN」の企画を担当した飯山学芸員に話を聞きました。

小惑星探査機「はやぶさ2」について教えてください

 「はやぶさ2」は2014年に日本が打ち上げた小惑星探査機です。その名前から分かる通り、「はやぶさ2」の前には、初代の小惑星探査機「はやぶさ」が存在します。
 「はやぶさ」は2003年に打ち上げられ、「イトカワ」と名付けられた小惑星へ向かい、その小惑星表面の岩石を採取して、地球へ帰還しました。途中、探査機との通信が途絶えてしまい、地球に帰還することが絶望視されるなどのトラブルを乗り越えて、2010年に地球に帰還した際には、社会的にも大きな話題になりました。
 「はやぶさ2」は、「はやぶさ」と同じように小惑星表面の岩石を地球に持ち帰る探査計画です。2014年に打ち上げられたあと、2018年に目的の小惑星「リュウグウ」に到着し、探査活動を行いました。2019年に「リュウグウ」を離脱して、2020年12月6日に地球に帰還カプセルを届けてくれました。

小惑星の石を地球に持ち帰ることにどんな意味があるのですか?

 私たちの住む地球は、今から約46億年前にできたと考えられています。地球ができたときは、何もない宇宙空間に地球が突然現れるはずはなく、現在の地球よりももっと小さな天体がたくさん集まって地球ができたにちがいないと考えられています。そのような地球の材料となった天体は、現在観測できる小惑星と同じような天体であったと推定されています。つまり、小惑星の岩石を調べることは、地球の材料を知ることになるのです。
 「はやぶさ」「はやぶさ2」は、小惑星の岩石を調べるために、目的の小惑星へ行き、その岩石を地球まで運ぶことを目的としています。多くの探査機では、分析器や測定器を搭載して、目的の天体へ行き、その場で分析や測定を行って、その測定結果だけを地球へ送信します。このようにすれば、地球に帰る必要はありません。しかし、探査機を宇宙へ打ち上げるためには非常に多くの燃料を必要とするため、探査機はできるだけ軽い重量に設計することが重要です。一方で、精密な分析や高精度の測定を行う計測器は大型で重量も重くなってしまいます。そのため、探査機に搭載できる分析器や測定器は性能をある程度犠牲にして、小型軽量の装置にせざるをえません。
 そこで、地球に岩石そのものを持ち帰ってくれば、宇宙へ打ち上げることができない高性能の研究設備で詳しい研究を行うことができます。そのような考えで、小惑星へ行って地球へ帰ってくる、という考え方で設計されたのが「はやぶさ」「はやぶさ2」で、これは世界的に見ても、非常に野心的で挑戦的な探査機の設計でした。

なぜ、「はやぶさ」の後にもう一度「はやぶさ2」を打ち上げたのですか?

 初代の「はやぶさ」が探査した小惑星「イトカワ」は、岩石でできた小惑星です。「イトカワ」と同じような岩石でできている小惑星はたくさんあり、地球の材料となった天体にも、「イトカワ」と同じような岩石がたくさん含まれていたと推定されています。一方で、地球には、海があります。地球に海がある、ということは、地球の材料の中にも水があったと考えられるのですが、「イトカワ」の岩石には、水は含まれていません。

 ところが、小惑星の中には、水(の元になる成分)を含む岩石を持っている小惑星があるのです。その一つが、「はやぶさ2」の目的地である「リュウグウ」です。地球ができたときに、「イトカワ」の岩石と同じような岩石でできた天体だけでなく、「リュウグウ」のように水を含む岩石を持った天体も地球の材料になっていたに違いありません。また、「リュウグウ」の岩石には、炭素も含まれていると考えられます。炭素は、生命体の細胞や遺伝子を作るためになくてはならない元素で、これも「イトカワ」の岩石には含まれていないものです。
 
 このような「イトカワ」と違う種類の岩石を研究したい、という目的で、「はやぶさ2」が打ち上げられたのです。そして、2020年12月6日、「はやぶさ2」の地球帰還カプセルが無事に届き、我々人類は水や炭素を含む(と推定されている)「リュウグウ」の岩石の実物を手にすることができたのです。

最後にひとこと


飯山 春海 学芸員

2021年2月28日(日)まで、プラネタリウムでは「はやぶさ2」の小惑星「リュウグウ」での探査活動を紹介するプログラム「HAYABUSA2 ~REBORN」を上映中です。ドームいっぱいに広がる映像で、まるで自分が「はやぶさ2」と一緒に「リュウグウ」へ旅しているような光景をお楽しみください。

飯山 青海のホームページ

 

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