第93回 企画展「光とあかり」
2015年10月1日
今回のスタッフだよりは、10月10日から始まる企画展「光とあかり」を担当する大倉学芸員に話を聞きました。光とあかりは、同じものではないですか?
よく言われて困ってます。光は、光そのもの。あかりは、ロウソクや電気スタンドなど光を出すものの意味で使わせてもらいました。
なぜ、今年「光とあかり」の企画展なのですか?
そのひとつは、今年が国際光年だったことがあります。
そして、準備していてこの企画展はあと2~3年したらできなかったのではないかと思いました。最近、家電量販店やホームセンターに行ってビックリしたのですが、もう電球の電気スタンドとか天井の蛍光灯器具とかが全然売ってないんです。全部LEDになっちゃっている。交換用の電球や蛍光灯はもちろん売っているのですが、照明器具はもう全部LED用に置き換わっています。大きなメーカーが電球の製造をやめたというニュースを数年前に聞きましたが、まさかこうなっているとは思いませんでした。なので、「あかり」についての企画展はいいタイミングだったと思います。

有機EL
国際光年についてはどうですか?
光と光に関する技術は、照明をはじめとして、情報・通信、エネルギー、医療、計測・測定、産業、天文学などありとあらゆる分野に使われています。
今日、世界中の人がインターネットでつながってますが、それを支えているのは、光通信技術です。光ファイバーの大容量・高速通信がなければ実現できないのですが、それは50年前にカオという人が書いた画期的な論文が契機になっていました。

光ファイバー
また、50年前、天文学者のペンジアスとウィルソンの2人が鳩と格闘していました。彼らが開発した装置に入る雑音は、アンテナに巣を作った鳩のせいだと最初考えたのでした。しかしその雑音電波は鳩のせいではなく、宇宙からやってきていたのでした。宇宙マイクロ波背景輻射と呼ばれるものの発見だったのですが、これは138億年前、宇宙が非常に高温の状態にあり、それが膨張して冷えて今の宇宙がある証拠でした。

宇宙マイクロ波背景輻射を発見したアンテナの前に立つ
ペンジアス(右)とウィルソン(左) WikipedeiaのRobert Woodrow Wilsonより
光を使って我々はいろんなことを知りますし、また情報をやりとりします。アインシュタインをはじめ、カオ、ペンジアス、ウィルソンなどが光に関する発明や発見をした節目の年にあたる今年、7人の科学者の業績を記念して国連は、2015年を光と光技術の国際年(IYL2015)とすることを定めたのです。
企画展ではどのような展示があるのですか?
たくさんの博物館、企業、大学、研究所、個人にお世話になってこの企画展が実現しました。お礼を申しあげたいと思います。
この企画展は、まずは、あかり(照明)の歴史をたどるコーナーがあります。たいまつ、ロウソクから最近の青色発光ダイオード、有機ELまでを展示します。
その他、紫外線を当てると光る石を展示します。蛍光と呼ばれる現象です。光は熱くなった物体から放射されますが、熱くなくとも光を出すものがあります。一般にルミネセンスと呼ばれる現象ですが、蛍光もそのひとつです。名前のとおり蛍光灯、そしてLEDや有機ELの光はルミネセンスです。自然界の蛍光石と工業的に作った人工の蛍光体の両方を展示します。
光は虹を作りますが、光を虹に分ける装置を分光器といいます。アダム・ヒルガーという100年前の分光器、日本のメーカーが作った40年前の分光器、そして現在の小型化された分光器も展示します。私自身、現在分光器がとても小型化されたのに驚きました。最新の分光器は動かして展示しますので、光がどんな成分を持っているかが分かります。



(左)金彩唐草模様つき黒釉陶器製石油ランプ(協力:関西電力株式会社)
(中)アダム・ヒルガー分光器(大阪市立科学館蔵)
(右)魔鏡(大阪市立科学館蔵)
最後にひとこと

大倉 宏学芸員