第95回 プラネタリウム「ロゼッタ、彗星を探査せよ」
2015年12月4日
今回のスタッフだよりでは、12月4日から投影を開始したプラネタリウム「ロゼッタ、彗星(すいせい)を探査せよ」について、担当の飯山学芸員に聞いてみました。どんな内容ですか?
2014年の夏に、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)が打ち上げた彗星探査機「ロゼッタ」が、チュリュモフ=ゲラシメンコ彗星という彗星に到着し、観測データを送ってきました。今回は、ロゼッタが送ってきた写真を中心に、彗星という不思議な天体を紹介します。

プラネタリウム「ロゼッタ、彗星を探査せよ」
まず、彗星という天体について教えてください。
彗星は、太陽の周りを回る天体の一種です。そういう意味では、地球の仲間、ということもできます。ただし、地球は一つしかありませんが、彗星は毎年何十個も新しい彗星が発見されるほどたくさん存在します。
彗星の一番の特徴は、しっぽを伸ばす、という点です。彗星の軌道は、他の太陽系の天体とずいぶん違って、太陽との距離が大きく変わります。太陽に近づいた時には、彗星はしっぽが発達して、特徴的な姿を見せます。一方で、太陽からの距離が遠くなると、しっぽが見えなくなるだけではなく、ずっと遠ざかってしまうと、全く見えなくなってしまうのです。

このように、彗星は劇的に姿を変える不思議な天体です。彗星の正体は、氷と岩石が混じった、「汚れた雪だるま」のようなものだと考えられています。そして、「汚れた雪だるま」そのものの大きさは非常に小さくて、地球からでは世界最高の望遠鏡をもってしても見えないくらいの小ささです。ところが、この「汚れた雪だるま」が太陽に近づくと、太陽の熱で氷が解けて蒸発します。その蒸発したガスが岩石質の砂やホコリを吹き飛ばして、巨大な彗星の姿を作りだすのです。
この彗星「本体」を調べるためには、どうしても、探査機などで彗星に接近しなくてはなりません。
「ロゼッタ」は初めての彗星探査機なのですか?
彗星に接近して探査を行った探査機は過去にいくつもあります。1986年にハレー彗星に接近して探査を行った「ジオット」は、その中でも有名なものだと思います。
しかし、今までに行われた彗星の探査は、探査機と彗星がすれ違う一瞬だけで写真撮影などの探査を行うものでした。今回の「ロゼッタ」は、初めて彗星のそばにとどまって、長期間継続的に観測を行うこと、そして、着陸機を彗星表面に着陸させることが「人類初」となるポイントです。
「ロゼッタ」の探査成果を教えてください。
たくさんの写真は、プラネタリウムで実際にご覧いただきたいのですが、映像にしにくい部分としては、例えば、彗星の周囲に広がっているガスの中に、酸素分子(O₂)が見つかったことや、着陸した表面の物質の中に有機物が検出されたこと、彗星内部は空隙(すきま)の多い構造であったこと、彗星の昼と夜とでの内部への熱の伝わり方など多くの発見がありました。初めて人類が到達した場所での探査ということで、到着してみるまでは予想もしていなかったことも多くありました。
表面の様子にしても、岩石質の石や砂などは、彗星の表面からガスの勢いで放出されるばかりではなく、弱い重力にも関わらず再び彗星表面に降り積もることもあることが明らかになったり、地下からガスが噴き出す場所はある程度決まっていて、間欠泉のように吹き出したり止んだりを繰り返していることなども明らかになりました。


最後にひとこと

飯山青海学芸員