第117回 サイエンスショー「マイナス200℃のふしぎ」
2017年10月9日
今回のスタッフだよりは、サイエンスショー「マイナス200℃のふしぎ」の企画・制作を担当した大倉学芸員に話を聞きました。液体窒素を使った実験ですね?

デュワー瓶という魔法瓶の親戚のような容器に入れて保存しているのですが、そこからガラス容器に取り出すと液体はごぼごぼと泡立って、湯気のような白い煙が出ます。まるでお湯が沸騰しているようですが、冷たいのです。お湯の場合、湯気は水蒸気が空中で冷えてできた小さな水滴ですが、今のこの白い煙は、空気中の水蒸気が冷やされてできたもの、水滴ではなくおそらく小さな氷晶です。
どんな実験が見られるのですか?
まず、カーネーションを液体窒素の中で冷やしたらどうなるか見てもらいます。花びらの中の水分はあっという間に凍ってしまいます。触ると繊細なガラス細工のようにパリパリと崩れていきます。では、水分のないゴムボールはどうなるでしょう?ゴム風船では?カーネーションの時には見られなかった不思議な現象をご覧いただきます。
他にどんな実験が見られるのですか?

笛付きヤカンの中に液体窒素を入れると笛が鳴ります。非常に冷たい温度で沸騰しているのです。しばらくするとヤカンは凍り付きますが、よく観察すると不思議なことが起こっています。どんなことが起こっているのかは、見てのお楽しみ。
実験の途中、黒いものを冷やしていましたが?

金属に磁石を近づけると電磁誘導といって、金属に電流が流れます。そして同時に電流により磁石の接近を妨げる、つまり反発する力が生じるのです。ところがこの誘導電流は金属の持つ電気抵抗のため流れ続けることはありません。そのため、反発力が持続することはないのです。ところが、超伝導体は電気抵抗がゼロなのですから、反発力は消えません。このような超伝導体が磁石を斥けるような現象を発見者の名前をとってマイスナー効果とよびます。
では、まだ超伝導になっていない超伝導体のそばに磁石を置いて冷やしていったらどうなるでしょう?こんどは、俗にピン止め効果と呼ばれる現象を見ていただきます。冷えて超伝導になれば、マイスナー効果で磁石が跳ね飛ぶだろうと考えた方はスルドイです。しかし、やってみると磁石は跳ね飛びません。写真では超伝導体の上で磁石が浮き上がっていますが、ショーではさらに不思議な現象をご覧いただきます。何が起こるかは、見てのお楽しみ。
最後にひとこと

大倉 宏学芸員
デュワー瓶という保存容器は、魔法瓶のようなものだと書きました。お湯を魔法瓶の中に入れておくと次第に冷めていきます。つまり、室温に近づいていくという訳。では、デュワー瓶に入れた液体窒素も室温に近づいていくのでしょうか。
たしかに、時間が経つと液体窒素は蒸発し、入れた量はだんだんと減って行きます。ところが、全て蒸発しない限り、デュワー瓶から取り出すと常に冷たいのです。そして容器から取り出した瞬間、上に書いたように沸騰してしまうのですが、しばらくすると温度は「自動的に下がり」マイナス200℃くらいになるのです。不思議です。
なぜ、デュワー瓶の中で液体窒素の温度は上がらないのでしょうか?なぜ取り出した瞬間より温度が下がってしまうのでしょうか?理由は皆さんで考えてください。
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