第118回 企画展「大阪市立科学館資料で見るノーベル賞展」
2017年11月3日
今回のスタッフだよりは、企画展「大阪市立科学館資料で見るノーベル賞展」の企画・制作を担当した小野学芸員に話を聞きました。当館は、物理・化学・天文などに関係する資料を約15,000点所蔵しています。これらの資料の中には、あのノーベル賞に関係するものもあり、今回それら資料をまとめて皆さんにご覧いただく企画展をご用意いたしました。
ノーベル賞とは

このノーベル賞の素晴らしいところは、賞の創設を遺言で残したノーベルが、国籍などにとらわれず、あくまでもその実績だけで受賞者を決定するよう決めたことです。
ノーベル賞が設立されたきっかけは、前述したとおり、ノーベルの遺言によるものです。
アルフレッド・ベルンハルド・ノーベルは1833年スウェーデンに生まれた化学者・発明家で、最大の功績はノーベル賞を創設したことですが、そのもととなったのはダイナマイトの発明でした。それまで、取扱いが難しかったニトログリセリンという薬品を珪藻土にしみこませ、必要な時に確実に爆発させるダイナマイトを発明し、莫大な資産を築きました。 そして、その資金を人類の役に立たせることに使おうと、ノーベル賞を創設したのです。
企画展の内容を教えてください

例えば、1901年の最初のノーベル物理学賞は、X線の発見によりレントゲンが受賞していますが、当館ではX線透過装置を所蔵しており、今回それを展示しています。そして、単に展示しているだけでなく、ボランティアのサイエンスガイドの皆さんがこの装置を使って、見学者にX線による像を確認してもらう演示実験も行っています。

他にもトランジスタの発明によって作り出すことができるようになった、世界初のトランジスタラジオの展示や、日本人初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹の直筆の原稿なども展示しています。
そして湯川秀樹は、この大阪市立科学館にとても関係が深いのです。科学館の立っている場所が、元大阪大学理学部が建っていた所で、湯川秀樹がノーベル賞受賞の研究内容となった「中間子論」の研究をしていた場所なのです。湯川秀樹がノーベル賞を受賞したのは、京都大学教授の時ですから京都大学の先生と紹介されるのが当然ですが、実はこの大阪の地で、ノーベル賞受賞となる研究をしていたのです。科学館の立地自体がノーベル賞の資料、そして日本初のノーベル賞の聖地と言えるかもしれません。
他にもノーベル賞の研究内容に関係する資料として、元当館館長の宮本重徳氏の「スパークチェンバー」、小柴昌俊氏、梶田隆章氏の「光電子増倍管」、白川英樹氏の「導電性プラスチック」、田中耕一氏の「質量分析器イオン化部」などの資料や、当館にも来館していただいた 故 南部陽一郎氏の自発的対称性の破れを視覚化した「磁石のテーブル」があります。この磁石のテーブルは、当館の斎藤館長が製作したもので、南部先生がわざわざ見に来られたという一品です。
これらを含め、他にも貴重な資料30点以上を展示しておりますので、ぜひ足をお運びいただければ嬉しいです。
最後にひとこと

小野昌弘学芸員


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